皆さんは、「成年後見」という言葉をご存知ですか？

聞きなれない言葉ですが、高齢化社会を迎えて、皆さんに知っていただきたい制度の一つです。 一人暮らしのお年寄りが悪質商法の被害に遭い、高額な商品を買わされてしまう、といったニュースを耳にされることがあると思います。「成年後見制度」を活用することにより、こうした被害を防ぐことができるのです。

「成年後見制度」は、認知症の高齢者や知的障害者・精神障害者の方など、判断能力が十分ではない方を保護するための制度です。 保護される方（成年被後見人）の自己決定権の尊重・残存能力の活用、家庭や社会で通常の生活をするノーマライゼーションの理念に基づいた制度であり、法律面・生活面で成年被後見人を支援します。

成年後見制度には、「法定後見」と「任意後見」があります。 「法定後見」は、本人の判断能力が不十分になったときに、家族などが申し立てることによって、家庭裁判所が援助者を選任し、援助する内容を決定します。本人の判断能力に応じて後見・補佐・補助に分けられ、援助する内容がそれぞれ異なります。 「任意後見」は、本人に判断能力があるうちに、援助者や援助してもらいたい内容をあらかじめ本人が選び、決めておくことができます。

後見人などの援助者が行う業務は、「生活や療養看護に関する事務」と「財産の管理に関する事務」に分かれています。 「生活や療養看護に関する事務」 ・介護サービス利用に関する契約や手続き ・入院契約などの医療に関する手続き ・各種福祉サービスの利用契約や福祉施設入所などの手続き 「財産の管理に関する事務」 ・不動産などの財産管理 ・現金・預貯金通帳・証券などの管理 成年後見制度では、その内容や成年後見人（援助者）の権限、任意後見契約の内容などを登記することになっています。

この「成年後見登記」をすることにより、取引の円滑を確保しているのです。 また、成年後見制度を利用した場合でも、日用品の購入やその他の日常生活に関する行為は、本人が自由に行うことができます。ただし、居住用の不動産の売買・賃貸には、家庭裁判所の許可が必要です。

成年後見制度を活用するメリット

・判断能力が低下した人の財産管理

・身上監護をすることができる

・成年後見登記によって、援助者の地位が公的に証明される

・成年後見人等には取消権があるので、本人が詐欺などの被害に遭った場合に契約を取り消すことができる

成年後見制度を活用するデメリット

・後見の場合は、選挙権を失ってしまう

・後見・補佐の場合、資格制限があり、会社の取締役や医師などの職に就くことができない

・手続きに時間がかかる

成年後見制度を活用した方が良いケース

・一人暮らしの高齢者が、訪問販売で不要なものを高額で購入してしまう

・配偶者に先立たれた

・物忘れがひどくなったなど、老後の一人暮らしに不安がある

・認知症の親と同居している兄弟が、親のお金を使い込んでいるようだ

・寝たきりの親と同居しており、適切な財産管理をしているにもかかわらず、親類から使いこみを疑われている

・重度の知的障害を持つ子どもがおり、両親が亡くなった後の生活が心配だ

・認知症ではないが、高齢のため体が不自由で外出もままならない。自分の代わりに財産管理をしてくれる人がほしい（この場合は、「財産管理委任契約」を結びます）

サポートを必要としている方の状態に応じて、この制度を活用することにより、その方の財産や生活を守ることができます。特に高齢者の方で、お金の管理に不安を感じておられる方は、成年後見制度の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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